その後、とり憑かれたかのようにむさぼり読みました。なので読完了してしまいました。
なので暴走的な読書感想になってしまいますが書いてみます。
ネタバレします。
この作品を簡単に説明し感想を言うのは無理だろう。
様々な感情が溢れ出し一気にいろいろな言葉が生まれてくるのだ。
この物語は『わたしは真悟』というタイトルが示す通り「真悟」が語っていく様式になっている。
ただ普通でないのは「真悟」が「産業用ロボット」だということなのだ。
これはいったいどういうことなのだろう。
12歳の少年さとるは父親の工場に「ロボットが来た」と聞いてアニメで見るガンダムのような(台詞で「ガンダム」と言う場面がある)カッコいいものを想像していたのに学校見学で見ることになった産業用ロボットを見てがっかりしてしまう。
だがさとるは機械音痴の父親に代わってこのロボットを「ティーチング」することができるようになり様々な知識を与えていく。
そしてここでもうひとつの主題でもある「愛」が始まる。
『小さな恋のメロディ』を思いわせるようなさとるとまりんの純愛、そして東京タワーのてっぺんでの不思議な結婚の儀式はこの作品でもっとも印象的な場面だ。
12歳の幼いふたりは「ふたりの子どもを作ろう」と決心する。そのためには333メートルの高さから「なにか」に飛び移らなけらばならないのだ。
幼いふたりが東京タワーを登っていく様を見守るしかない。まりんはその恐怖におびえ何度も落ちそうになりながらもさとるとの愛のためにと頑張るのだ。
ふたりはおとなたちの配慮によって引き裂かれてしまうがふたりの子どもはまりん(真鈴)とさとる(悟)から組み合わされた「真悟(しんご)」となって産業用ロボットの中で人格を持つのだ。
両親にと共にまりんはイギリスに行く。
まりんに邪な恋心を抱くロビンは彼女をエルサレムに連れていく。
母であるまりんを救おうと真悟が自分を犠牲にして守る姿に打たれてしまう。
どんなに急いでも0,003秒間に合わないはずだったのに真悟は母まりんを救うのだ。
いったいこれはなんなのだろう。
だがまりんは子どもの時代を終えてしまうのだ。
真悟の目の前からまりんが消えたことがそれを意味するのならこれは子どもの夢なのだろうか。
真悟の父であるさとるは父親の解雇によって母と新潟へ行きそして奇妙な出会いから佐渡島へと渡る。
真悟はまりんの言葉を伝えるために父・さとるに会いに行こうと決心するが出会う人に体の一部を使ってエネルギーをわたすたびに壊れ記憶も薄くなり最後には「手」だけになってしまう。
だが最後の力を振り絞って「アイ」という文字を地面に書きその文字をさとるは読むのだ。
これはいったいなんなのだろう。
そしてたぶんさとるもまたこの時にはもう子どもではなかったのだろう。
これは子どもの夢なんだろう。
産業用ロボットももしかしたら生きていて何かを考えていてどこかに出かけてしまうのかもしれない、という夢。
こどもは誰かをすごく好きになるけど愛し方の方法は知らない。
そういう夢。
そんな夢から真悟が作られた。
そんな夢を見ることができたのだ。